編集文献学に関する総合的研究

科学研究費助成事業 基盤研究(A) 23242016

研究概要

編集文献学は、19世紀後半から体系化が進んだドイツ文献学が、20世紀初頭にヨーロッパ各地で受容され、いったんは国別、分野別に細分化し、それが最近になってあらためて融合される形で成立、発展しているものです。この融合が近年になって生じた背景には、情報技術の飛躍的な進歩にともなう人文学研究の基盤のドラステックな変化があります。インターネットのコンピュータの普及は、人文学研究の基盤をめぐる環境に、グローバル化とデジタル化という2つの大きな潮流をもたらし、そのなかで、その基盤構築をめぐる理論が、汎ヨーロッパ規模で再検討されているのです。

西洋におけるこうした重要な動向は、まだ日本においてはほとんど知られていません。そもそも日本では、グローバル化以前のヨーロッパ各地の個別の文献学状況自体、ほとんど把握されてきませんでした。従来より、日本の近代的な人文学研究制度の形成には、ドイツ文献学の影響が大きいことは盛んに指摘されています。ところが、その19世紀のドイツの理論自体についてすら、正確な理解がなされていません。ましてや、20世紀後半のドイツ編集学とイギリス書誌学の関連といったヨーロッパ各国間の重要な影響関係についてまったくといっていいほど知られていない状況です。

今回の研究は、日本におけるこうした欠落をうめるために、まずは現在展開されているヨーロッパの編集文献学について包括的に理解し、その批判的な導入をはかるとともに、グローバル化、デジタル化が進むこれからの時代の人文学研究基盤の再整備に向けて、日本の人文学研究者という立場からの理論的、実践的な提言をおこなうことを目的としています。